自己免疫性肝炎(AIH)
自己免疫性肝疾患のうち、自己免疫性肝炎(AutoImmune Hepatitis(AIH))は肝実質部分の障害による肝機能障害でAST/ALTが主に正常値を越えて高くなります。まれに急性肝炎の病型をとることがありますが、基本的には慢性肝障害の経過をたどることがほとんどで、放置すれば肝硬変にも進行しうる疾患です。まれに肝臓がんの合併も報告されています。診断には採血でIgG高値、抗核抗体(ANA)などの異常により診断できることもありますが、肝生検(針で肝臓の組織を採取して顕微鏡で見る検査)による確認が必要なこともあります。
治療はステロイドに良好な反応を示す、とされており、通常は中等量以上のステロイドから治療を開始して漸減し、少量のステロイド維持療法で肝機能を正常に維持することができます。しかしながら、ステロイドを中止することで病状が悪化することが多く、中止することは困難です。ステロイドを少量まで減量できないこともあり、その場合免疫抑制剤(アザチオプリン*など)を使用することでステロイドを減量、中止することもできますが、免疫抑制剤の継続は長期間必要となります。
* アザチオプリンは2018年7月27日よりAIHに対して保険適応になりました。また、アザチオプリンなどチオプリン製剤の代謝に関与する酵素であるNudix hydrolase 15(NUDT15)遺伝子のcodon139における遺伝子多型はアザチオプリンによる白血球減少や脱毛などの副作用の発現に関与しており、この遺伝子多型をあらかじめ調べることで副作用を起こしやすい人を調べることができるため、アザチオプリンによる重篤な副作用を回避することが可能になります。自己免疫性肝炎に対するNUDT15遺伝子検査も2019年11月に保険適応となりました。)