糖尿病
糖尿病ってどんな病気?
読んで字のごとく、おしっこ(尿)に糖が混ざる病気です。
この尿に糖が混ざってくる原因として、血糖(血液中の糖分)の上昇があり、糖尿病とは血糖が高い状態が慢性に続くような病態のことを指します。血糖が高くなる原因となる異常(糖代謝異常)が糖尿病の病態です。
インスリンと糖尿病
糖代謝とは血糖を上昇させる作用と血糖を低下させる作用のバランスで一定の範囲内に血糖が上がりすぎたり、下がりすぎたりしないように調整する生理的な作用のことです。
血糖を上昇させる作用は、食事摂取による直接の糖吸収の他、生理的な内分泌作用(甲状腺ホルモンや副腎ホルモンなど)による上昇などがあります。
インスリンは糖(グルコース)を細胞内に取り込んで血糖を下げるのに必要なホルモンです。糖代謝、糖尿病の病態に大きく関与するホルモンで、治療にも使用されます。
インスリンは膵臓のβ細胞で作られて血中に放出されます。β細胞が減少したり、破壊されて消失したりするとインスリン不足により血糖を十分低下させることができなくなり、糖代謝異常をきたして糖尿病になります。
糖尿病とは「インスリン作用の不足に基づく慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群である」と定義されています
糖尿病の分類
- 1型糖尿病
β細胞の破壊(自己免疫性、特発性)によりインスリンが分泌できない状態となり、絶対的なインスリン欠乏状態となっています。治療には継続的にインスリンの補充が必要です
- 2型糖尿病
インスリンの分泌量が不十分、または働きが低下しているために、相対的にインスリン欠乏状態となり血糖を下げることができなくなっている状態です
- その他の特定の機序,疾患によるもの
内分泌疾患や、慢性膵炎などの膵疾患、肝疾患、遺伝性疾患や薬剤性(血糖上昇作用のある薬剤の影響により、血糖の変動をきたす。1型糖尿病類似のような病態になることで血糖が上昇する薬もある(免疫チェックポイント阻害剤))などの病態が含まれます
- 妊娠糖尿病
妊娠が糖代謝に影響している状態で、「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常」と定義されています。診断基準で糖尿病の基準を満たしたものは妊娠糖尿病に含めません。出産後に軽快することもありますが、妊娠糖尿病は将来の糖尿病発症のリスクが高いとされています
診断基準
A 糖尿病(一般的な耐糖能異常で、妊娠糖尿病を除く場合)
①空腹時血糖 126mg/dl以上 (空腹時採血:なにも食べないで10時間以上経過した状態で採血)
②75gOGTTで血糖の2時間値が200mg/dl以上
③随時血糖 200mg/dl
④HbA1c 6.5%以上
①~④を満たせばであれば糖尿病型と判定します。別日の再検査で①~④を再度満たせば糖尿病と診断します。ただし④を2回満たしても糖尿病と診断できません。
①と④を同時に満たせば単回の採血のみで糖尿病と診断することができます。
また、
- 糖尿病性合併症として網膜症がすでに発症している場合
- 典型的な糖尿病の症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)を認める場合
血糖が①~③のいずれかを満たしていれば糖尿病と診断できます。
B 妊娠糖尿病の診断
妊娠中に検査した75gOGTTにおいて下記のいずれかを満たした場合に妊娠糖尿病と診断する
①空腹時血糖値 ≧ 92 mg/dl
②1時間値 ≧180 mg/dl
③2時間値 ≧153 mg/dl
Aの診断基準により糖尿病と診断された場合は妊娠糖尿病から除外する
75gOGTTについて
糖尿病の診断のために75gのグルコースを含むジュースを飲んでいただき、
ジュースを飲む前、飲んだあと、30分毎(~2時間まで)の血糖値、血中インスリン量を測定して、糖尿病かどうか、インスリン分泌が低下しているかどうかなどを評価します。
本文は日本糖尿病学会 糖尿病 55(7):485~504,2012をもとに作成しています