貧血3
前回(といってもかなり前の投稿になりますが)は小球性低色素性貧血、鉄欠乏性貧血についてお話しました
今回は逆に赤血球が大きくなる貧血のお話です
大球性貧血
大球性貧血はDNA合成障害を反映しているとされ、
VitB12、葉酸欠乏が背景にある巨赤芽球性貧血をまず考えます。
VitB12欠乏症の原因としては下表のようなものが挙げられます
分類 | 原因 |
不十分な食事 | 完全菜食、ダイエットなど |
吸収障害 | 内因子(胃壁細胞で作られるVitB12吸収に関与する糖蛋白)の欠如(自己免疫性胃炎、胃全摘後、バイパス術後など 内因子の阻害 胃酸分泌の低下 小腸疾患(炎症性腸疾患などによる回腸末端障害、セリアック病、悪性腫瘍、胆道、膵疾患など) VitB12の競合(広節裂頭条虫の寄生による消費、盲係蹄症候群による細菌繁殖による消費) AIDS |
不十分な利用 | 酵素欠損 肝疾患 輸送タンパク質の異常 |
薬剤性 | 制酸剤(胃酸分泌の低下) メトホルミンなど |
また、葉酸欠乏の原因としては
分類 | 原因 |
不十分な摂取 | 野菜摂取不足、慢性アルコール中毒、完全静脈栄養など |
吸収障害 | セリアック・スプルー病、その他吸収症候群、抗てんかん薬、葉酸吸収不要 |
不十分な利用 | 葉酸拮抗薬(メソトレキセート、メトホルミン、トリメトプリム、トリアムテレンなど)、アルコール多飲、抗てんかん薬など |
需要増大 | 妊娠期、授乳期、乳児期 |
排泄量増加 | 腎透析(腹膜、血液透析) |
などが挙げられます
これらの栄養障害がなく、補充によっても貧血が改善しない場合や、赤血球以外の血液成分(白血球や血小板)が減少傾向であれば血液疾患などの関与も考えられます。
VitB12や葉酸の欠乏にはアルコール多飲(依存症)が係ることも多いのですが、実際は欠乏症に至らなくても、アルコール多飲の方の血中にはアルコールやアルデヒド(アルコールの代謝産物)が多く含まれ、これが赤血球膜に影響することで大球性貧血をきたしうると考えられています。
胃を切除したあともVitB12欠乏になりやすく(VitB12の吸収に必要な内因子は胃壁細胞でつくられるため)大球性貧血に注意が必要です。また、補充する際には経口摂取では吸収されないため、注射による補充療法が必要になってきます。
貧血と胃疾患
これまでのお話で貧血を見たら、赤血球の大きさに関わらず、消化管疾患(胃の病気)が係わっていることが多いことがおわかりいただけましたでしょうか?
健診で貧血を指摘されたのに血液内科ではなく消化器内科に紹介されたのはなぜ?と思っていた方もいるかもしれませんが、こういった背景があったからです。
もちろん、消化器疾患や婦人科疾患などが否定、除外されて原因がわからなければ最終的に血液の病気も疑っていくことになります。