膵臓がんの早期発見のためには
こんにちは、院長の中島です
2人に1人は「がん」にかかる、3人に1人は「がん」で死亡すると言われる昨今ですが、がん検診による早期発見、早期治療や新しい抗癌剤や分子標的薬の登場で治療成績が向上してきています
しかしながら、膵臓がんは今でも早期発見が難しく、難治性の癌として今後の大きな課題となっています。
逆に言うと、膵臓がんでも小さいうちにみつけて(早期発見)切除してしまうと生存率はあがるとされており早期発見が治療の鍵になってきます。
困ったことに膵臓がんはある程度進行しないと症状が出ない、症状が出てから発見されても、早期発見とはなりにくく、症状が出る前に健診などで発見することが重要とされていますが、膵臓は腹部のなかでも、胃の裏側の深部にある臓器のため、消化管内の空気の影響や肥満などの条件で観察が難しくなり、健診での発見率も低いと言われています。
早期発見のためには、リスクファクター(危険因子)を押さえて検査をおこなっていくことが重要です
膵臓がんのリスクファクター
膵臓がんにはリスクファクター(危険因子)があります
膵癌診療ガイドライン 2022年版の中で膵臓がんのリスクファクターは
- 家族歴(散発性膵癌、家族性膵癌家系)
- 遺伝性膵癌症候群
- 喫煙歴
- 飲酒歴
- 糖尿病
- 肥満
- 慢性膵炎
- IPMN
- 膵のう胞
- 膵管拡張
- 胆石・胆嚢摘出術
- 血液型(O型以外)
- 感染症(B型肝炎、C型肝炎、ヘリコバクター・ピロリ感染)
が挙げられていますが、その中でも重要なリスクファクターが
- 家族性膵癌家系
- 飲酒歴
- 慢性膵炎
- IPMN
と考えられています。
膵癌が疑われる異常な画像所見
このリスクファクターのあるかたは症状がなくても腹部エコー(US)などを積極的に行い画像上の異常(膵管径の異常(拡張、途絶)、腫瘤、膵のう胞)が認められる場合はCTやMRI(MRCP)による精査をさらに行い、限局的膵萎縮、脂肪化や膵管狭窄の有無について評価し、膵癌が強く疑われる場合はさらに入院による精査を行っていくことで早期膵癌(Stage 0、StageIA)の発見率、根治切除率が向上すると考えられています。
膵癌を疑う契機になる画像所見
- 膵管径の異常
- 膵管拡張
- 膵管狭窄
- 腫瘤
- 膵のう胞
- 限局的膵萎縮、脂肪沈着(CTによる評価)
膵癌の診断に至らなかった場合でも、画像の異常が認められた場合は、定期的な画像検査により変化の有無をフォローすることで早期膵癌を発見することができる可能性が高くなると考えられます。
腹部エコー
当クリニックでは腹部エコーを積極的に行っており、画像の異常が認められた場合は、CT、MRや入院検査Iなどの積極的な検査目的に連携している高次医療機関にご紹介させていた抱いております。
検査で膵癌と診断されなくても、画像の異常があれば、紹介先の医療機関でCT、MRIなどの検査または当クリニックで定期的な腹部エコー検査を行っています。
糖尿病の患者さんは特に注意が必要です
糖尿病は悪性腫瘍の合併率が高く(糖尿病は膵癌だけではなく、多くの癌のリスクファクターです)、糖尿病で通院中の患者さんも、
- 血糖コントロールが悪くなってきた場合、
- 診断がついた時点
で腹部エコーによるスクリーニングで膵癌が関連した糖尿病ではないかを疑うことが重要です。
糖尿病の悪化は膵癌だけではなく、ほかの部位の悪性腫瘍が合併していることも多いため、必要に応じて、全身精査をおすすめする場合もあります。
健診でも腹部エコーを積極的に受けましょう
特定健診と呼ばれる健診は生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)を特に重点的に意識した健診となっていますので、癌を意識した項目は含まれていません。がんの早期発見のために積極的にがん検診(肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん)をオプションで受診することをおすすめします。
膵癌に対するがん検診はありませんが、症状がなくても、人間ドックなどの詳しい健診を受ける機会があれば、腹部エコーを積極的に追加してみることが膵癌の早期発見につながると考えられるため、是非おすすめします。
ご家族に膵臓がんの方がいる、糖尿病、慢性膵炎、アルコールを多く飲む、など先に挙げたリスクファクターに該当する人は特に腹部エコーを受けたほうが良いでしょう。